激化する競争に勝ち残る

 2017年がスタートして早や3カ月が過ぎたが、不安定な世界情勢の中で日本の金型メーカーは各社各様の課題に取り組んでいる。インターモールド・金型展の開幕を前に関西の金型メーカー様にお集まり頂き、現況や注力している取り組みを語ってもらった。

出席者

アイセル 望月貴司社長アイセル
望月貴司社長

 精密プレス金型及び小型プレス、ダイセット、精密ガイド、アクチュエーター、カップリングなど幅広い製品を展開。金型はクレジットカードやICカードなど樹脂や紙を抜く金型を製造。ICカードはシェア70%を占める。本社は大阪府八尾市。社員数126人。国内6拠点ほか、海外も韓国、中国、台湾、タイにも進出。

福井精機工業 清水一蔵専務

福井精機工業
清水一蔵専務

 プラスチック用金型メーカー。主力はベアリングの球を保持する部品「樹脂リテーナー」の金型。40年来手掛け、事業の50%を占めるほか、自動車のパワーステアリング向けの部品は、世界で走る車の4台に1台は同社の金型を使った製品。製品開発から携わり、金型、試作、量産立ち上げまで行う。本社は大阪市大正区。社員数は32人。

寿精工 永田淳也社長寿精工
永田淳也社長

 アルミ・亜鉛・マグネシウム用のダイカスト金型を製造する。型締力40t~1200tまで。自動車のブレーキやスロットル関係、ハウジングの部品から産業機器、雑貨など幅広く手掛ける。売上比率は自動車関係が5割、産業機器が3割。本社は大阪府枚方市。社員数は27人。

ヤマナカゴーキン山中義貴室長

ヤマナカゴーキン
山中義貴室長

 冷間鍛造金型メーカーで90%が自動車向け。海外では冷間鍛造部品の成形も。鍛造や切削などのCAE解析ソフトはシェア約80%。ドイツで開発されたセンシング・システム「ピエゾボルト」も販売。本社は大阪府東大阪市。工場は本社ほか千葉、広島、中国(2カ所)、タイ。社員数は国内230人、海外320人。

森鉄工所 森弘臣社長森鉄工所
森弘臣社長

 プレス金型メーカー。自動車用ブラケットなどの小物部品やデッキプレートなど建材を中心に150t~300tまでの各種単発型、順送型、トランスファー型など小物・中物のプレス金型製造をはじめ、ロール成形品の切断などライン内における専用機の金型まで手掛ける。本社は大阪市西淀川区。社員数10人。

夜間無人運転で人件費抑制

司会 厳しい競争の中で勝ち残るために各社が技術的に取り組んでいることは。

清水 今年は「いかに効率良くするか」をテーマに掲げています。昨年6台の機械を入れ替え、主力のマシニングセンタ2台には量産加工に使われるようなパレットチェンジャを付けました。金型の製造コストはほぼ人件費が占め、材料費は全体の10%程度です。当社の金型は小さな入れ子が多いので、多くのワークを人の手をかけずに無人で加工することに挑戦し、コストを抑える体制を構築したいと考えています。

司会 やはり金型の価格競争は激しい。

清水 先日、タイの日系メーカーから仕事を1件頂きましたが、現地の金型メーカーと競合すると価格が安くなります。当社は品質に自信を持っていますので、あとは海外のコストに合わせるには人の手を掛けないことが重要なのです。そのため、段取りだけすれば後は機械が加工してくれる体制づくりに取り組んでいます。

司会 日本で作って世界で闘うという事ですね。

清水 ベアリングの保持器(リテーナー)を作れる金型メーカーはそれほど多くないと思いますが、国内の自動車市場は縮小傾向です。しかし世界全体を見れば自動車市場は伸びていくでしょうから、海外からも受注していきたいと考えています。今回はその第1歩です。日本品質を守りつつ、コストを削減する取り組みが必要だと思い、人の手をかけない無人稼働を今年のテーマに置いています。

司会 その成果は。

清水 良いですよ。毎日夜間稼働させていて、夜間の機械稼働時間で見ると、これまで月間700~800時間だったものが、1400~1500時間に増えました。社員ももっと機械を稼働させようという空気になっていて、人しか出来ないこととの棲み分けを図っています。

司会 人しか出来ないこととは。

清水 例えば、金型設計や仕上げ、お客様のフォローなどがあり、そこを強化したい。まずは海外需要を国内に取り込めるようにしようと考えています。

永田 当社も夜間稼働をしています。しかし、作業者は機械の稼働状況が気になるので、土・日曜日も機械を見に来ていました。だからワイヤー放電加工機にカメラを付けてパソコンで状況を見られるようにしましたが、休み中もパソコンの前に居続けてしまうんです。

望月 LANでつながっていないのですか。

永田 データを機械に蓄積させ、機械の中でクローズするシステムで、実際に目で確認しないと分からないようになっています。金型メーカーは量産部品加工と違って毎回違う形状を加工するので、どんなトラブルが起こるか分かりません。切粉が噛んで刃物が欠けるようなイレギュラーなトラブルも起こるので、社員が交替で見に来ています。製造業の宿命だと思っています。それを背負って対価にするのが僕らの仕事だと。

情報共有し、加工ミス削減

座談会の様子1

司会 改善による短納期化にも取り組んでおられます。

永田 10年ほど前から取り組んだのが加工ミスを減らすこと。当時は加工ミスが多く、担当者同士が相談して手直しするので、詳細な情報が私まで上がってこなかった。そこで加工ミス用の用紙に原因や対策法を記入することを徹底しました。当時は1日20~30枚ほど加工ミスの書類が出てきましたが、現在は週1枚ほどになり、伝達漏れもなくなりました。社内LANを使って、社員全員が書類を見て、コメントを加えられるなど情報の共有化を図っています。これにより、加工ミスによる工程戻りが激減し、加工時間も短縮。コストダウンも図れました。加工ミスをすれば、材料を買ってやり直さなければならず、コストと時間が大きく違ってきます。

清水 永田社長自身で1つ1つのミスを確認しに行くのですか。

永田 ずっと見に行っていましたね。何人かが話していたら寄って行って聞いていました(笑)。そうすると現場の管理者も私と同じことをするようになり、少しずつ変わっていきました。

司会 変わるのにどれぐらい時間がかかりましたか。

永田 2、3年はかかりました。一時ギスギスした時期もありましたが、すっかり定着しました。人間だから絶対うっかりミスはあります。しかし、ミスが悪いのではなく、情報を公開して伝えることが一番大事というスタンスで取り組みました。

司会 新しい加工の提案も出ましたか。

永田 ありました。幹部が集まる会議で色々な提案が出て、それを軸に話し合い、システムも変えました。例えば、昔は部品図面がありませんでしたが、部品図面を出してワークと一緒に回したり、管理するファイルを作ったりなど、どうしたらミスを無くせるかを議論するようになりました。

 当社は、何でも機械でやろうとすると、仕上げが待ち状態になったりするので、手が空いたら他を手伝ったり、加工を途中までして仕上げに渡すなど工夫をしています。プレス金型は3次元で削って型合わせをして、10~50個ほどサンプルを作り、お客様に提出して検査し、問題なければ焼入れます。ですが、焼入れで歪が出るので、再度型合わせをするなど、手間ばかりかかっています。当然コストもかかってくるので、焼入れ後にもう一度削り直すなど、出来るだけ型合わせの時間を減らすように考えています。
 今後は、高い技術を持つ人が少なくなってくると思うので、そうなると機械に頼らざるを得ません。いかに機械で出来るか色々なやり方を見ながら勉強しています。

望月 当社では自動化と高精度を要求されているので、製品に不良が出続けないよう、去年1年間、インラインでの自動計測に取り組み、切削油が付着した状態でも計測してデータをフィードバックできるようにしました。ロボット化も図り、ラッピングも機械化しました。今後はさらに自動化を進めていきます。
 先ほど機械の稼働時間の話がありましたが、仕事がないと機械も動かせませんので、リスク分散を考え新規外注先を増やし、それを管理する専門の資材部門を作りました。毎回コストをチェックし、似た加工や部品があれば、必ず比較するなどコストダウンを図っています。資材部門で部品調達をコントロールすることで、できるだけ設備台数を減らし、固定費が小さくなるようにしています。固定資産が減り、バランスを見ながら外注に出せば、社員も他のことに時間を割けます。

司会 インラインでは寸法を計測するのですか。

望月 そうです。面粗度はある程度安定しますが、仕上げの研削工程は砥石の摩耗により寸法が数ミクロン変わってくることもあり、実測しながら加工しています。測定機メーカーと数年前からタイアップして、量の多いものをなるべく自動化しています。加工が終わって外す前に測定して次工程に申し送ります。作業者が機外に運ばなくて良いのがメリットで、残業も減らすことができました。できるだけ今の人員と設備で多く加工できるようにしたいです。
 ただ、機上での計測は測定角度に制限があるので、大事な部分はやはり測定機上で測ります。

現場主導でリードタイム短縮

山中 去年からリードタイム短縮に取り組んでいます。一昨年に本社社員のモチベーションを上げる目的で3S活動を始めたのですが、現場主導に切り替えたところ、継続性も出てきて、順調に進んでいます。その成功例を生産の仕組みに応用して、リードタイム短縮を図っているところです。

司会 具体的には。

山中 今は熱処理から荒加工、仕上げ、検査までのリードタイムを短縮する活動を行っています。大阪本社には3つのラインがあるのですが、自分の工程に流れてきてから次工程に渡すまでの日数を5日以内と設定しました。

司会 課題はありますか。

山中 今まで各工程は流れてきたものを順番にこなしていくだけでしたので、1日の生産予定量が分かりませんでした。そこで、ワークを1列に並べ、今日仕上げなければならない量を決めると、他工程のメンバーとの会話が生まれ、情報共有ができるようになりました。負荷がかかっている工程に人が集まるようになり、能動的に社員が動き出す風土も生まれています。技術的に特別なことはしていませんが、次は機械導入や省人化の検討を始めようと思います。また、設計から現場に図面が出されるまでのリードタイムも短縮したいですね。設計が遅れることも多く、製造に残された納期までの時間が少なくなってしまうケースも多々あります。

IoTで付加価値を

司会 金型メーカーにとってのIoTとは。

永田 IoTの利用価値は業種によって異なると思います。金型メーカーは従業員30人以下の企業が多く、IoTといっても、1台のマシニングセンタの中で情報はクローズしており、切削工具の摩耗時間や径の補正、空き機械の活用による稼働率向上などは従来からやっている1つの工場管理です。JIMTOFでも色々なメーカーがIoTを謳っていましたが、機械の稼働時間や刃物の使用状況などを国内だけでなく世界中から集められるというところまでで、その情報をどう活用するかの答えはありませんでした。これから色々な情報の活用方法を模索する段階ではないでしょうか。

司会 機械以外の情報もあります。

山中 当社が販売している「ピエゾボルト(ボルト型センサ)」は、ボルトの締結箇所における負荷荷重を高精度に測定することができるのですが、どんな改善が出来るのか聞きたいという要望が増えています。現在、大学や企業と一緒にテストするなど評価を進めているところです。ピエゾボルトを組み込んでおくと、品質的な異常に気付いて、すぐ機械を止めることができるのが商品価値の1つです。今後は在庫管理や使用状況など、お客様における異常をすぐ当社で分かれば、その対策提案など、お客様とスムーズにやり取りができ、大きなメリットを提供できると考えています。

座談会の様子2

清水 当社は社内でトライ成形した上でお客様の工場で量産立ち上げを行います。成形機が変わると製品の出来上がりも変わるので、全てのキャビティに圧力センサを組み込んでいて、トライ時に圧力データを取っておき、その波形と一致するようにセッティングすれば、一気に量産を立ち上げることができます。
 成形機を何十台も設備しているお客様は当然24時間稼働させていますが、それを監視する人を今後は減らしたいし、減っていくと思いますので、そこにIoTを絡めることが出来ないかと考えています。夜間も社員1人がモニタを見ていて、圧力異常が出れば確認し、修復あるいは機械を停止させる。そうすれば無駄な不良品の生産もなくなります。

司会 サービスとしてのIoTですね。

清水 仕事を受注するためのサービス+αですかね。国内外で稼働している当社の金型を監視して、異常やショット数など色々な情報を手元で見られるといいなと思います。ただ、それができるからといって金型が2倍の価格で売れるというわけではないですが、サービス的な付加価値と考えられないかと。

望月 IoTというのは1つの仕事を進める上での戦術的な部分と、大きな戦略的な部分があると思います。加工時間を短くしたり工具寿命を長くしたりなど、どれだけコストを下げるかという戦術的な面と、経営者として大きな視野で新しい仕事を取ったり、効率を上げていくという戦略的な面です。

 ものづくりを合理化するための要素がIoTという言葉に置き換えられているように思えます。

望月 例えば、QRコードを読むだけで金型の履歴等の情報を見ることができるのもIoTでしょう。

 我々も修理した情報を診断書のように整理して持っており、お客様が必要なら見せることもできます。

望月 大手電子部品メーカーでは想像を絶するIoT化を進めています。スマホの画面を作るのに、金型全てにQRコードが付けられて、どんなメンテナンス状況でどれだけのショット数で負荷がどれくらいかかっているかなど、全ての情報が中央に集約されます。
 IoTの究極は人間が寝ていても工場は働いてくれる全自動化ではないでしょうか。当社は金型とプレス機を製作していますが、プレスの負荷だけでなく、ありとあらゆるところにセンサとサーボモータとカメラを取り付けており、ある海外ユーザーは「世界中どこでも誰でも、例えば今日来たアルバイトでもボタンを押すだけで出来る」仕組みを作ろうとしています。ただ、外部とはつながないというケースの方が多いと思います。

展示会で新情報を見つける

司会 話は変わりますが、インターモールドが4月12日から東京ビッグサイトで開催されます。何を見たいですか。

永田 全部、隅から隅まで見て回ります。JIMTOFも行きましたが広すぎてただ歩いていくだけでゆっくりブースに入って話を聞く余裕がありませんでした。

望月 とにかく新しいものをみたいですね。機械や工具だけでなく、今まで知らなかったものを知って、それを自分の所でどう活かせるかを考える。何か1つは新しい製品や技術、情報を見つけて帰りたいですね。

 海外の金型や部品に興味があります。海外の金型は安いと言われたり、修正に手間取ってかえって高くつくと言われたりします。だから、どんなものを作っているのか自分の目で確かめたい。

清水 私も全体的に見て回ります。新しいものを見ておくということが大切で、新しいモノは点と点がつながって出来ていると思いますので、とにかく色々なものを見たいですね。

山中 私も同じです。全体的に回って、今年はこれが変わったなと気づくと嬉しいです。何か探したい目的を持っていく場合もありますが、大きいブース・小さいブース関係なく回ります。

永田 特に小さいブースを回るとびっくりするような情報と出会います。

 直接金型に関係なくても、知っていたら役に立ちますからね。

司会 福井精機工業さんは金型展に出展されていますね。

清水 今回で4回目になります。当社の売上は1つのお客様で半分以上占めるので、新規開拓のために展示会へ出展しています。小間代や経費を考えると費用もかかるので、出展する展示会を見極める必要があります。

司会 出展した感触は。

清水 初出展時は良かったです。樹脂金型の中でも丸モノが得意ですが、困っているお客様が来られて受注に繋がり、今では売上の1割までになりました。なかなか飛び込み営業は難しいので、展示会で名刺という鍵をもらって、営業していかないといけない。そういう意味で展示会は1つの営業方法だと思います。

望月 当社もフィルムをバリなく抜けるコア技術を活かせる分野を調べ、展示会で発信し、金型を受注できれば、次は機械とのセットや特殊装置などの販売につながり、良い連鎖を生んでいます。基本はユーザーの困り事を解決することだと思います。

司会 ブースの大小に関係なく隅々まで回ることが大事ですね。びっくりするような情報がきっと見つかるはずです。営業活動にも有効に活用できそうです。
 本日は貴重なお話をお伺いでき、ありがとうございました。

金型新聞 平成29年(2017年)4月12日号