加工技術の粋集めて

 燃焼温度1700度 耐熱・強度がカギ 

 発電用ガスタービンの技術革新が進んでいる。経済産業省は昨年6月、「次世代火力発電に係る技術ロードマップ」を策定し、2030年度の二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標を達成するために、より発電効率の高い火力発電技術の開発に取り組む。中でも高効率化に向けて重要となるのが、次世代のガスタービン技術。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、「次世代火力発電等技術開発」というプロジェクトを立ち上げ、次世代ガスタービン技術の研究開発を行っている。「日本の火力発電技術は世界トップクラス」と話す環境部クリーンコールグループの武信弘一プロジェクトマネージャーに、技術動向や、これから必要となる生産・加工技術、方向性などを聞いた。

次世代火力発電に係る技術ロードマップ(FN作業)

―火力発電技術でのNEDOの取り組みを教えてください。
 「クリーンコールグループでは、石炭(コール)をいかに効率良く上手に使うかという『クリーンコールテクノロジー』の技術開発に取り組んでいる。その中で、将来的にCO2の削減に繋がる技術として、次世代火力発電技術があり、その一つの分野として石炭ガス化システム、さらに将来的にはそれに応用される次世代ガスタービン技術がある」

―次世代ガスタービンとは。
 「ガスタービンは、簡単に言えば、天然ガス(LNG)や石炭ガスをバーナーで着火して、高温の火炎でタービンを回す構造。発電効率を上げるためには、どれだけ高い温度で運用できるかが鍵となる。現在運用している最高効率のガスタービンは、燃焼したときの温度が1600度。次世代ガスタービンというのは、プラス100度の1700度級。100度上がることで、年間でCO2は1割ほど削減でき、コストメリットも億単位で期待できる。2020年度の実用化を目標に研究開発を進めている」

―次世代ガスタービンに必要なことは。
 「金属の耐熱性には限界があるため、高温に耐え得るような工夫が必要。その一つとして、金属を冷却する方法がある。例えば、空気を金属の中を流したり、表面に空気を通す微細な穴を空けて空気の膜を張るなど。いかに上手く冷却できるかで、運用できる温度の限界が決まってくる。もちろん、耐熱性に優れた素材を使うことも重要だ」
 「また、耐熱性を上げる方法としてコーティング技術も不可欠。とくに、鉄に比べて耐熱性が高く、熱伝導率の低いセラミックをコーティングする技術の開発が進んでいる」

―耐熱性のほかには。
 「強度だ。タービンは非常に高速で回転するため、素材の強度が低いと、すぐに破断や損傷してしまう。一方向凝固・単結晶など耐久性に優れた組織構造を作ることが求められている」
 「また、それらの部品を組み上げる技術もノウハウの塊だ。効率良くタービンを回転させるためには、微妙な調整をしながら、ミクロンオーダーで組み上げなければならない。また、熱による変形もあるので、事前に精度の高いシミュレーションも求められる」

―加工技術の粋を集めたという感じですね。
 「もともと1600度の技術を開発したのは、日本が世界初。次世代ガスタービンでも、これら全ての要素が不可欠。現在は、色々な技術ができあがりつつある段階。来年秋ごろから1700度級の実証設備の建設が始まるなど、これからさらに研究開発が本格化していく。これまで培ってきた高い技術力を活かしつつ、さらに高めていく」

―1700度級の次の段階を教えてください。
 「複合化がテーマになる。現在は、ガスと蒸気タービンのコンバインドサイクルだが、将来的には、燃料電池を組み合わせたトリプルコンバインドサイクルになるだろう。ただ、実用化には大容量の燃料電池の開発が不可欠。石炭火力では、前述の石炭をガス化してガスタービンで発電する複合発電(IGCC)の開発が進んでいる。こちらも将来的には燃料電池を組み合わせていく」

―今後、重要となる加工、生産技術は何ですか。
 「精度良く測れないと高精度な加工はできないので、計測技術は重要になるだろう。あとは、強度の高い金属の組織を作るために必要な超精密な鋳造技術。また、高精度なシミュレーションに必要なセンシング技術や、コーティングに欠かせない溶射技術なども重要。さらに、3Dプリンタも補修や加工など様々な部分で使われていく」

―業界の方向性は。
 「再生可能エネルギーにシフトしていくというのが、世界的な方向性。ただ、エネルギーミックス(電源構成)のバランスを考えると火力も上手く使っていかなければならない。今現場では比較的低効率の火力設備も稼働している。技術開発を進めつつ、最新設備へ切り替えを図っていく」


NEDO プロジェクトマネージャー
武信弘一氏

 1982年4月三菱重工業株式会社入社、神戸造船所ボイラ設計課配属、93年4月電気工業会進歩賞受賞、2012年9月博士(工学)取得、15年3月まで三菱日立パワーシステムズ株式会社燃料電池事業室所属、同年4月国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)入構、現在に至る。主に国内外事業用及び産業用発電ボイラの設計並びに燃料電池開発及び事業化に従事、現在は次世代火力発電及びクリーンコール技術開発の事業マネージメントに従事する。


日本産機新聞 平成29年(2017年)3月25日号