バリは金属を加工すると必ず発生し、製品の品質不良や生産性低下を引き起こす。ところが金属加工の匠たちは、機械化や独自のノウハウでいともたやすく取り除く。その方法は。それに至ったプロセスは。バリ取りの現場を訪ねた。

匠の現場その1 中農製作所
匠の現場その2 中田製作所
匠の現場その3 友栄精密

 中農製作所 手順決め、正確に除去

 前工程でバリ減らす

中農製作所1 作業者が手際よくハンドリーマで金属の破片をかき出していく。くるくると回転させたり、角度を変えてこすったり。そのたびに作業台にぽろぽろと落ちる。その金属片は、半導体装置に使われる部品の交差穴にできたバリだ。

 中農製作所では、半導体装置や油圧機器向けなどの精密部品のバリは、あらかじめ決めた手順に従って取る。キズがないかを確かめ、十数もの細かな穴の中のバリを順序通りに取り除き、最後にキズ限度見本と品質を見比べる。

 手順に従って作業をするのは、正確に、キズをつけずにバリを取るためだ。半導体装置や油圧機器向けの部品の穴はガスや油の流路。バリが残っていると、ガスや油に押し出され、製品の品質に支障をきたす。キズは、僅かでも流量や出力に大きく影響する。

中農製作所2 そのため、「要求される品質の高い部品は、100分の1㎜ほどの凹凸もバリとして取り除く」(生産部・北山茂部長)。顕微鏡を覗きながら作業するという。

 中農製作所が手掛けるのは、半導体装置や油圧機器をはじめ医療機器、駆動機器などの精密部品と、自動車のトルクコンバータの部品で、それぞれ全事業の50%ずつを占める。

 トルクコンバータは大量ロットを生産するためバリ取りも機械加工の工程に集約している。しかし精密部品は約1600種類もあり、ブラストマシンやロボットでバリ取りを機械化するのは難しく、いまも手作業だ。

上野部長

上野部長

 とはいえ、生産技術部の上野耕司部長は、工夫次第で効率化できる方法があるという。「例えば、前工程でバリを最小限に抑えれば、バリ取り作業の負荷が減る。バリ取りは永遠の課題。効率や品質を改善できる新たな策を今後も探っていく」。

本社:大阪府東大阪市足代北1-18-26
新町工場:大阪府東大阪市新町21-26
TEL:072・981・0969
代表者:中農康久氏
従業員:50人

 中田製作所 機械加工で品質安定

 社内資格で技能向上

中田製作所1 半導体や液晶パネル製造装置などのアルミ精密部品の切削加工を手掛ける中田製作所は、マシニングセンタでバリ取りを行う品質の安定化と自動化に取り組んでいる。

 以前は機械加工が終わると、一つひとつ人の手でバリを取っていたが、作業者の習熟度で品質にムラがあった。半導体装置などの部品は、バリが残っているといけない。部品をスライドさせるときに部品同士が傷を付けてしまうためだ。「バリがしっかりと取れているかどうかで顧客からの評価が大きく変わる」(生産管理課、吉井健司氏)。

 そこで、マシニングセンタの加工プログラムにバリ取りを盛り込んだ。精度が不安定な手仕上げの工程をできるだけ省くことで、品質のばらつきの低減させるためだ。また、バリ取りの工程に多くの人員が必要だったが、1人で複数のバリとり工程を同時に管理することでき、自動化にもつながったという。

南川氏 吉井氏

南川氏 吉井氏

 一方、人の手が不可欠な部分もある。製造管理課の南川泰宏氏は「工具では入りきらない部分は人の手に頼るしかない。最終の仕上がりを確認するのも人だ。バリ取りは感覚。自動化を一層進めながら、最終検査の社内資格を設けるなど社員の技術向上にも注力していく」と話す。

大阪府八尾市上尾町5-1-15
TEL:072・996・8621
代表者:中田寛氏
従業員:32人

 友栄精密 バリ抑える独自の工法

 加工結果分析し最善策

友栄精密1 ステップ加工をするドリルの回転速度がとたんに遅くなった。ドリルはそのまま半導体装置の部品を貫いていく。開いた交差穴の裏側にはバリが。しかしハンドツールでこすると難なく取れる。穴の出口で回転を緩め、発熱を抑えたことで、バリの硬化を防いだからだ。

 金属部品メーカー友栄精密では、こうしたバリを取り除き易くしたり、発生を抑える独自のノウハウを持つ。加工の途中で送りや周速を落としドリルからエンドミルに切り替えたり、ワークの材質や形状に合わせて最適な切削液を選んだり。専用工具をメーカーに製作して貰ったりもする。

 バリ抑制のノウハウは、これまでに蓄積した加工結果の分析に基づく。手掛ける部品は今、7千~8千種類。過去の実績も含めるとそれを遥かに超える。形状はインペラや渦巻状、複数の穴が交差…、材質はチタン、ステンレス、アルミ、炭素鋼…と実に様々。その殆どは半導体装置や航空機向けの、数㎛のキズで品質不良となる精密部品だ。

藤岡工場長

藤岡工場長

 藤岡臣久工場長は「同じ加工はまたとないが、過去の加工データを参考に最善の加工方法を導き出す。バリを最小限に抑えることで、バリ取りをして貰う協力会社の負担もミスも減る」と話す。

 友栄精密はもともと(1960年設立)空調機器の量産部品を手掛けていた。ところが今から10年ほど前、そのメーカーの内製化の方針で仕事が激減、精密試作部品へと舵を切った。繁木秀信専務は「半導体や航空機関連の企業に飛び込みで売り込み、培った技術で要求に応え、設備を増強していった」。

 今では全事業のうち量産部品30%に対し精密試作部品が70%を占める。しかし繁木専務は「これからは再び量産部品にも力を入れていく。そのためにもバリ取りの更なる技術向上が必要。弛まぬ研究を続けていく」。

本社:大阪府富田林市中野町東2-2-11
TEL:0721・26・0392
代表者:井村巧氏
従業員27人

日本産機新聞 平成29年(2017年)2月15日号