型青会を金型発注の窓口に

新春座談会ー第1部ー金型メーカー4社が語る 新時代の経営戦略

 1月号では昨年の景況や各社の取り組みなどを報告してもらった。本号では日本金型工業会西部支部の青年部である「型青会」にスポットをあて、現状の活動から今後の方向性、より活発に活動するためのアイデアなど白熱した議論を行った。

ヤマナカゴーキン 山中雅仁社長

ヤマナカゴーキン
山中雅仁社長

司会 では、山中会長に「型青会」についてお聞きしたいと思います。

山中 しばらく活動は休止状態でしたが、みんなで仲良くやっていこうという目的で、一昨年に再スタートできたことがまずよかったなと思います。規約では50歳が定年で私はすでにお役御免ですが(笑)。今年は会員会社を訪問し、会社紹介や懇親会を開いて、お互いをよく知っていこうというところです。それを核にして自由に話ができる会になってほしい。東部支部の天青会や中部支部のイーグル会は非常に仲が良いと感じました。

清水 連れみたいな感じでしたね。

山中 連れなんですよ。同志というか、プライベートから仕事のことまで色々話ができる雰囲気があります。それを型青会でも大事にしようと思っています。仲良くなれば活性化に繋がるでしょう。長い時間をかけて積み上げていくことが大事だと思います。

司会 清水専務は型青会に入っていかがですか。

清水 他の会社を見せてもらうことはなかなか無いので良かったです。プレスや射出成形など、違う部分があっても金型メーカーの話は似た部分もあります。まだ、お互いを知っていこうという段階ですが、顔を合わす度に顔見知りになるのが面白い。型青会員の会社は行ったので、次は他の金型メーカーや異業種に行くか、しっかり考えていかないといけないと思っています。

福井精機工業 清水一蔵専務

福井精機工業
清水一蔵専務

清水氏 「横のつながりを強みに」

司会 人脈ですね。

清水 横のつながりが出来たら良いなと思います。例えば、インサート成形する時に、中身の金属を型青会メンバーにお願いできれば面白いでしょう。そういったことは繋がりがないと難しい。他の金型メーカーも参加してくれれば、それは僕らの強みになります。この人に頼めばどこかに話を振ってくれるようなことがあっても良いでしょう。

▪︎新しい取り組み

戸屋 金型メーカーが揃っている百貨店みたいなサイトがあると面白いと思っています。お客さんが注文する時に発注先を見つけることができる場所。一般的なイメージで言うと百貨店のようなサイトを作ると、ニーズに合うと思います。お客様が入りやすいサイトにするのがポイントですね。

清水 お客さんからすれば全部を1カ所にまとめて発注したいと思っているはずですね。

戸屋氏 「関西カラーを発信」

司会 それは新しい取り組みです。

戸屋 金型の百貨店は型青会ということもあるし、関西カラーのブランディングをするというイメージで発信にしてはどうかと思います。金型業界の活性化にもつなげられたらという思いもありますし、1社だけではどうにもならないので、皆さんの力を集めて元気にするというのはどうかと。選択肢のある場所を作れると面白いかなと思います。

中辻金型工業 戸屋加代総括部長

中辻金型工業
戸屋加代総括部長

司会 重要な点は。

戸屋 想いが同じであることでしょうか。「うちだけ儲かったらいい」では成り立ちません。利益だけを目的にすると失敗するので、お客様をどうサポートできるかを考え、その結果が利益につながると思います。どこに仕事を任せるかの選択はあくまでお客様。まだまだ困っているお客様はいらっしゃると思いますので企業側から情報発信していくことは重要だと思います。

伊吹氏 「型青会は勉強の場」

司会 伊吹部長はどう思われますか。

伊吹 大阪は金型専業の企業も多いですが、滋賀では専業で金型を作っている企業は非常に少ないです。横のつながりが数えるほどしかないので、同業者と話をする機会を持てたのは型青会に入ってからです。様々な話や考え方があるので勉強させてもらっています。
 私も広報は非常に大切と考えています。やり方は色々とあると思いますが、型青会に入ってみたいと思われるようになりたいですね。

山中氏 「仕事につながるネタを」

司会 広報的に考えると課題は情報発信ですか。

山中 フェイスブックなどSNSは情報発信の面で非常に面白いツールだと思います。親近感を感じやすくなりますしね。また、型青会に入った時のお得感も発信したい。西部支部では当面は自動車の軽量化に焦点を当てた勉強会を考えており、一例ですが、自動車メーカーの技術者による講演会を開く予定をしております。本会では仕事につながるネタを、メディアを通じて発信すれば会員も増えていくと思います。

伊吹機械 伊吹宏一営業部長

伊吹機械
伊吹宏一営業部長

司会 他の意見はどうでしょう。

清水 以前に天青会(東部支部)の方と京都の会社を訪問しましたが、新幹線を使って移動しないといけないくらい遠い所に行ってでも見たいと思うような企画をしたいですね。日本金型工業会という名前も借りて、異業種など普段見られないような所を見れば感じるものもあるはずです。私は中小企業同友会に入っていて、月に2、3回出ていますが、「リーダーシップとはどんなこと」などテーマを議論していますが、テーマを絞ることも良いと思います。

司会 工場見学のあと、来年の見通しや課題など話し合うのはどうですか。

山中 それは良いアイデアですね。見学会のあと集まって議論する。

戸屋 宿題があるのも良いと思います。例えば、工場見学で気づいたことを議論する。1つ決めて会員企業で実行し、次の会で結果を報告する。型青会に入って会社が良くなれば、この会に入りたいと思うのではないでしょうか。

山中 そうですね。どういう形にするかが大事で、例えば、ヤマナカゴーキンが人材教育でこんなことをしている。そこで、メンバーと議論して意見を聞きブラッシュアップしていく。宿題の方法やテーマを工夫すれば会員にとってすごいメリットがあるはずです。

伊吹 けっこう「金型屋あるある」ってありますよね。それをテーマにするのも面白いんじゃないですか。

司会 2カ月に1回ぐらいできそうですね。

戸屋 1年間やってみて、売上何%上がりましたってなると、やれば出来るという風になると思います。

清水 期限を設けると社内でもやりやすいですね。例えば、決めたことを2カ月後に写真撮影して持っていくとなると、社内で実行する良いきっかけになると思います。

戸屋 社員も参加させたいです。自分たちでパワーポイントを使い資料を作って、やったことに対して発表する。工場の人たちって、そういう機会もないと思うので、外に出るきっかけを作ってあげるのも良いと思います。

司会 現場の人ですね。

戸屋 なぜかというと、工場内だと狭い世界になります。こういう場で他の方と話すとイメージが変わります。それに「現場あるある」など共通テーマもあると思うので、他の会社の現場の人と話すことで、自分の会社の立ち位置が分かりますし、話を聞いて、いろいろな気づきを得ることができて、成長につながるのではないかと思います。

司会 可能性が広がりますね。

山中 経営者はこんなことをしているんだと知ってもらえるのも重要です(笑)。

司会 発信には社内向けと社外向けがあるということですね。

山中 学生向けもあります。

清水 見学会をしてもこのような議論の場がないんだと思います。そのあと飲みに行くだけで終わってしまう。誰かが仕切ってやれば、何か出てくると思います。会のタイトルを付ければ出来ると思います。

▪︎キャッシュフローの改善期待

司会 ありがとうございます。では話題を変えて、先日、下請代金の支払に関して現金化の要請が公正取引委員会より出されましたが、今後どんなことが期待できますか。

山中 中小企業にとって大変ありがたいお話で、キャッシュフローの改善が期待できます。これから個別に交渉したいと思いますが、確実に実行できるよう行政からの支援もお願いしたいです。

清水 そうですね。資金繰りが比較的しやすくなると思います。

戸屋 現金化されることで受注側、さらにその下請けにもキャッシュがスムーズに回るようになり、企業としては良い方向に進むことが期待されます。しかし、課題もあると感じています。製作期間が長期に渡る場合や検収条件などで、入金より先に仕入先へ支払う場面も出てくるのではないかと考えます。検収条件や決済条件を明確にして受注契約をしておかなければ、現金化されることが逆に負担になる可能性もあると感じています。

伊吹 現金化の通達は非常に有難いです。当社では金型を受注してから代金を完全に回収するまでの期間が5カ月程度ですが、その間の人件費や部品費など支払いはほぼ現金であり、さらに手形(例えば120日)での決済となった場合、受注してから代金回収まで約9カ月と、非常に厳しいキャッシュフローになります。
 ただ、決済条件の話はなかなかお客様に言いにくいので諦めていたところもあります。まずは今回の通達のことや事情を理解してもらい、現金化してほしいと伝える必要があるのではないかと思っています。

▪︎社員教育について

司会 互いにメリットがあるようにできるといいですね。では、最後に社員教育についてお聞きします。

戸屋 外向きにプレス金型基礎検定を公的でなく当社公認という形で始めました。座学、実技、テストとあり、3級、2級、1級と認定証をお渡ししています。外向きの講習ですが、社員に実施した所、新しく入社した数名が合格できませんでした。ところが、今まで型に触れたことのなかった社員が検定後の次の日から金型を組み始めました(笑)。社内で講義した結果、大きく変わりました。社内教育として設計、加工、組立など技術を学んで、他の社員に教えられるレベルを目標に、今後はカリキュラム化もするつもりです。社内検定を人事評価にも取り入れようと検討しています。

司会 営業はどうしているのですか。

戸屋 当社では「営業は工場にいるみんなであって、私はお客様をつなげているだけ」と社員に伝えています。人や工場を見て、お客様が評価した結果、注文が決まるので、「みんなで営業して」と言っています。課題は数字を意識して動く事ですね。ある社員が「ノー残業手当を付けてほしい」と言ったことがありました。1週間に4日間残業なし。つまり残業が月4回以下で、売上と利益のボーダーラインをクリアしたら手当が付く。そうすると、自然に改善に向かい、助け合って仕事も上手くいく。そういう仕組みはどうかという提案がありました。こちらが全部揃えて教育する仕組みではなく、自発的にやる仕組みをどう作り込むかというのも考えても良いかと思います。

司会 人材採用はどうされていますか。

伊吹 高卒の優秀な人材採用に力を入れています。高卒の場合、本人はもちろんですが、親や学校の先生に認知してもらうことも大切だと感じています。実際に先生に来てもらい、インターンシップ生を受け入れるなど、つながりを重視して採用につなげています。金型の重要性やものづくりのやりがい、会社のイメージを把握してもらう良い機会だと考えています。前向きで行動力のある人であれば、未経験の人でも伸びていくと思います。  

司会 教育上の工夫はありますか。

伊吹 近年、設計など前工程の人材が不足ぎみです。当社では3次元ソリッド設計や成形解析などを駆使して、前工程で問題解決して後工程から手戻りがないように取り組んでいます。そのため、設計など前工程の業務量が相対的に増えています。
 また、瞬間的な設計能力が必要な場面もあり、設計ができる人をどう育成するかが課題です。そこを分厚くしないと会社は伸びないと確信しています。当社では現場経験のある人材を育てていこうと思っているのですが、皆さんはどうされていますか。

清水 当社は今20歳前後の高卒2~3年目が5人ほどいます。多能工化という話もありますが、当社の常務などは昔からやっていて何でも出来ます。今は分業でマシニング、ワイヤー、放電などを担当するので金型そのものを知らない。毎週水曜日に勉強会をしていますが、来年から若い社員だけで金型を作ってもらおうと思っています。講義で教えても頭から抜けていくと思うので、実際に触ってもらう。あとは技能検定。受かると、普段大人しい子でも「おかげさまで受かりました」と照れながら発表しますよ。

伊吹 仕事のローテーションはどうしていますか。

清水 します。一旦生産が落ちますが。

戸屋 タイミングが難しいです。マシニングを極めてから異動させるのが良いのか、3カ月で異動させるのか期間が難しいと思います。

伊吹 当社でも新しい技能の習得にどんどん取り組んでいってもらっています。工場の負荷は工程・時期によって様々で、負荷の高くなっている工程に人材を集められるように、もっとフレキシブルな体制にしていきたいです。また、自分の担当工程のことだけでなく、金型全体のことも考えて仕事ができる体制にしたいと感じています。

戸屋 金型を知って加工するのか、金型を知らず加工するのでは大きく違うと思います。なぜ、ここに穴があいているのかなど、意味を理解していると作業効率があがります。

司会 3~5年で異動させる会社もありますね。

伊吹 人材があと数人いれば、上手くローテーションできる体制ができるのではと感じています。そのためにも前向きで行動力のある人材の新規採用は重要ですね。

司会 では、最後に山中社長にお聞きしたいと思います。

山中 重視しているのは社員教育です。加えて、社員が楽しく仕事ができる環境を整えることです。仕事の環境を変えること、例えば、社内のローテーションや海外勤務なども人材育成には必要だと思っています。ちょっとした席替えも驚くほど効果があると思います。あとは部下の「やる気スイッチ」を見つけ出して、それを押せるような上司を育てることも大切です。

司会 皆さん長時間ありがとうございました。

金型新聞 平成29年(2017年)2月10日号