人材育成 倦まず弛まず

販売店4社が語る 時代の変化を乗り切る戦略
第1部 -業界の課題-

 新春座談会の2回目となる今回のテーマは「人材育成」。勉強会などに出席させ、自ら考えるきっかけとなる場を設けたり、工具セットを渡しものづくりへの興味を促したりするなど、各社様々なやり方で工夫を凝らす。世代交代が進んでいることも課題の一つで、これまでの常識にとらわれず、若者のメンタリティを理解すべきだとする意見も。しかし、そこに奇手はない。地道なやり方で人の育成を進める姿が浮き彫りになった。

日立企画 小林一也社長

日立企画 小林一也社長

司会 これまでお聞きしたことを実行するには人の育成が不可欠です。育成方法や考え方についてお聞きしたいのですが、金沢工機さんはホームページで営業を「コンシェルジュ」と表現していますね。

金沢 社員が考えたのですが、お客さんからの要望はどんなことでもお受けしますという意味で、「コンシェルジュ」と比喩的に表現しています。どんなことも対応するのだから、知識は充実していなくちゃならない。けれど、重要なのは知識だけではないと思うんです。

常に考えさせる

司会 と言いますと。

金沢 常に考えさせることも必要だと思うんです。そのためにメーカーや商社の勉強会は知識を得るために行かせていますが、他に業界団体の総会や研修両行にも積極的に参加させています。その目的は色んな人や社長と会って話をすること。とにかくいろんな人と会って考えさせることしかない。そういう場を与えるのが私の仕事だと思っています。また、いつも「お客さんにかわいがられるようになれ」と言っています。それに必要なものは、挨拶や声、笑顔など全ての要素です。

長谷川工機 長谷川浩司社長

長谷川工機 長谷川浩司社長

司会 小林社長は人材育成での課題はありますか。

小林 育成とは異なるのですが、人材での苦労はあります。お客さんが年配で、うちの担当者が若手というケースでのコミュニケーションギャップって生まれているのです。個人の資質もあると思うのですが、最近はすぐにネットで調べる人が多い。けれど、少しでも新聞などを読んで覚えたり、考えたりした方がいい。だから、毎日「株価や世界の情勢はどうなると思う」と問いかけています。それと色んな意味でもっと遊べばいい。お客さんのところに行って、くだらない話でもしながら遊べばいいんですよ。

長谷川 うちは小林さんと逆のケースなんです。40歳以上の人材が多くなってきているので、若手が多いお客様とのコミュニケーションが難しくなっています。

司会 どう対応していますか。

長谷川 今のところ若手の採用は考えていませんし、もうこればっかりはどうしようもない。コミュニケーションも課題ですが、若手はパソコンやネットを使い慣れているので、ネット通販を使うことに何の抵抗もない人が多い。それに今後どう対応していくかが課題ですね。

司会 小林社長のところは、資格取得を推奨するなどの育成を進めていますが、具体的にはどんなことをされていますか。

金沢工機 金沢邦光社長

金沢工機 金沢邦光社長

小林 従業員一人一人に「My(マイ)工具セット」を持たせています。私もセットを持っていますが、こだわりの工具ばっかりです(笑)。従業員にも「必要な工具があるなら何でも買ってやる」と言っています。勉強にもなりますし、我々は「工具屋」なんだから、お客さんの現場で作業するのにみっともない工具は使わせたくない。社内に所有する機械も汎用機からNC機にしたり、必要だと思うものは、何でも与えて、ものづくりに興味を持ってもらえるような環境を作ってはいます。しかし欲しがらないのです。欲がないんですかね。どうすればいいでしょうか悩んでいます。

司会 仲田社長の会社ではどのような育成を?

仲田 うちの場合は経営理念とは別に1年間のスローガンがあります。月曜日朝に唱和しているのですが、社員全員でスローガンを決めています。

功労者を投票で表彰

司会 今年は何ですか。

仲田 『強い気持ち、思う行動、一致団結、今だからこそ』です。それを基に、個々の取り組みや思いを言葉にしています。私の場合は『勝ちにこだわる』としています。1年後には、従業員全員で、最も頑張った人や社内で取り決めた製品を多く売った人、社内のムードメーカーになった人などを投票して表彰します。アサカ機工の社名から「ASK大賞」や「トップセールス賞」などとしているのですが、金一封も添えています。

アサカ機工 仲田拓司社長

アサカ機工 仲田拓司社長

司会 表彰制度を作った目的はやはりモチベーションアップですか。

仲田 会社が決めたことだけではなく、自ら考えたことなので、最後は自分がやったか、やらなかったかは自分で判断させるようにします。その意図は、誰かに言われたことや強制されたことは、その人のせいにしがちです。そうならないように自分で考えて、行動することを意識させています。ただ、理念だけでは食べてはいけない。その人それぞれがやる気になるスイッチがどこなのかはなかなか見つけられないので、個々の売上の3か月間で目標額を達成した人にはインセンティブが発生するようにしています。「しなさい」というよりも自然にしなければならないようになればいいですね。実際、自らで勉強会に参加したりする人もいますね。

司会 長谷川社長のところは、中堅からベテラン社員が多いとのことですが、モチベーションアップはどうしていますか。

長谷川 やはりインセンティブになりますよね。じゃあ、40歳以上の人に何をしてもらうか。何をやらせるか。もちろん、製品は常に新しいものが出るので、メーカーの勉強会には行かせますが、難しいですね。

司会 人材育成、モチベーションアップは難しい課題ですね。

金沢 今の話はあくまで我々世代から見た理想に近づけようとしているわけじゃないですか。でも、もうそれすら間違いなのかもしれないとも思うんです。今の時代、お客さんも変わってきています。我々の求める理想の営業なんて今は求められていないのかもしれません。我々も変わらないといけないのかもしれません。

若者の考え理解する

司会 何でそう思うようになったのでしょうか。

金沢 最近、年度末の30、31日に休みたいと相談してきた社員がいたのですが、その理由がアニメのイベントなんです。有給休暇の取得理由を聞くのは本来ダメですが、積極的に有給を取ってもらいたいので、理由は「なんでもいいんだよ」と言っていたのです。それがアニメイベント。日頃から勤務態度も本当に真面目だし、正直に話してくれたこともあって、年度末ではありましたが、話し合ってお互い納得し、両日とも半休という形になりました。しかし、昔だったらそんな理由で休む人はいなかったかもしれない。有休を取得する理由すらもかなり変わってきている 

金沢 やはり若い人を育てるのは、ある程度若い人の気持ちを理解できる人か、若い世代の先輩でないとダメなのだと思いますね。とはいえ、中小企業だと万遍なく世代がいるわけでもないので、難しさもあります。少なくとも、我々は経営者なのだから、理解はできないまでも、そうした若い人の気持ちを分かってやろうとしなければいけないのだと思います。例えば、我々の世代は家や車を買うのが夢だという人が多い。けれどそれらに価値を感じなかったり、買うことすら夢だと思わない人も多いという現実を理解すべきなんでしょうね。

仲田 「どういう業界であるのか」「どんな業務であるのか」など会社や業界のイロハをきちんと説明するなど入口をきちんと整備することは重要だと思います。その後は営業にしろ、業務担当にしろ、入社後に意識を高めていくことは個々人の感性ややる気、目的に合わせていくしかない気がします。

飽くなき勉強が財産に

小林 やはり育成は難しいですよね。僕らの業界はお客さんのほうがプロなんだから本当に大変ですよ。金型メーカーに「金型はこうだ」なんて言えない。一方でお客さんとの知識競争の側面もあるので、「それを追いかけろ」、「勉強しなさい」と言っています。「それは必ずあなたの財産になるから」と。

販売店4社が語る 時代の変化を乗り切る戦略
第3部-事業継承-
へ続く

日本産機新聞 平成29年(2017年)1月15日号