手動ウインチ ロープの安全規格改訂

 ウインチやチェーンレバーホイストを手掛ける富士製作所はさらなる安全性の強化に乗り出す。このほど、手動タイプのウインチ「ポータブルウインチ」の安全規格を全面的に改訂した。ワイヤーロープの安全係数を従来の2倍から3.55倍に引き上げ、安全性をさらに高めた。ここまでするのは「これまで以上に安全を担保しなければならないことが必要になっている」(皆川浩社長)からだ。こうした取り組みが可能なのは、歯切り、研磨、焼入れ、溶接、塗装まで内製できる能力にある。生産子会社の富士MFGを取材した。

製品開発支える一貫生産

多様な機械が並ぶ工場内

多様な機械が並ぶ工場内

 アメリカで多く使われてきた手動ウインチの安全基準は北米式に則ってきた。その基準はワイヤーロープの安全係数の2倍。「これでも安全性は全く問題ない」(皆川社長)レベルだが、今回、手動タイプの「ポータブルウインチ」全製品の規格を見直した。クレーン構造規格第54条に基づき、係数を従来の2倍から3・55倍にまで引き上げた。一部の製品では、最大荷重を見直したものもあるほど。ここまでするのはユーザーの安全への要求が高まっているからだ。「民間以上に高い安全性を要求される官公庁などでは、明確にその根拠を示す必要がある。これまでの基準でも十分に安全は担保されているが、より厳密に論理的に提示できるように定義し直した」という。
全高15mの試験タワー

全高15mの試験タワー


 ここまで徹底して安全に考慮した製品開発ができるのは、歯切り、研磨、焼入れ、溶接、塗装までの工程を内製しているからだ。その中核をなすのが、石川県能美市にある同社の生産子会社「富士MFG」だ。

 延床面積5000㎡ある工場には、新旧様々な機械が並ぶ。5軸マシニングセンタなど新型の工作機械に加えて、今では見られなくなった汎用機械も少なくない。「こうした旧式の機械のほうが効率的だったり、生産性が高かったりすることもある」という。また、歯切りなどの切削加工だけでなく、溶接、研磨、塗装も内製化している。

 この内製能力は納期面でも効果を発揮する。手動、電動ともウインチは装置に組み込まれることが多く特殊仕様も少なくない。内製しているおかげで、当然そうした特注への対応は早くなる。さらに「4万点の部品在庫を持つ」ことで、より迅速に対応できる体制を採っている。現在の納期は手動ウインチで平均約1カ月、電動ウインチでも約2か月しかかからない。それでも皆川社長は「何とか2週間程度にまで縮めたい」とさらなる短納期化を目指す。

部品を溶接

部品を溶接

 安全へのこだわりは試験設備にもある。工場内には、全高15メートルの試験タワーを持ち、重量で10トンまでの荷重試験が可能だ。この試験タワーでは、全数試験を行っており「絶対的な安全を担保する」という。

ポータブルウインチ

ポータブルウインチ

 近年では、安全に加え、環境への意識も高まり、それにも対応している。例えばRoHS指令に準拠するため、メッキは六価クロムから三価クロムに切り替えたほか、内製している塗装もすべて鉛レスにした。

 今後について「安全や環境対策は終わりがない。自社生産を武器にさらなる安全、環境負荷低減への取り組みを進めたい」としている。


富士MFG概要

皆川社長

皆川社長

住所=石川県能美市赤井町はー195
敷地面積=14900㎡
延べ床面積=5000㎡
生産品目=手動、電動ウインチ、チェーンレバーホイストなど運搬機器
従業員数=55人


日本産機新聞 平成28年(2016年)11月15日号