〜挑戦すべきこと〜

〜大会へ馳せる思い〜

 「挑戦する勇気~New made in Japan~」を掲げた今年の全日本機械工具商連合会(全機工連)の東京大会。大きな成長が難しい国内市場、ネット通販の登場、厳しい価格競争など業界を取り巻く環境を考えると、何もしないことは衰退を意味しかねない。今大会の山田雅英大会実行委員長も「ユーザーが色んな事に挑戦しているのに、我々も変化しなければならない。もしかすれば今が最後のタイミングかもしれない」と話す。では、どう変化し、どんな挑戦していくべきなのか。全機工連の前西孝夫会長は「それぞれが強みを発揮できる道を探し、勇気を出して踏み出すこと」と企業に応じた個別解を探すことが必要と指摘する。東京都機械工具商協同組合(東機工)の小川修一理事長は「機械工具業界だけの枠組みではなく、もっと立体的な視点で考える必要があるのでは」とこれまでの見方に縛られず、自由な発想が重要と話す。今回の東京大会開催に合わせて、全機工連の前西孝夫会長、東機工の小川修一理事長に今後の業界として挑戦すべきことや方向性をインタビューし、山田雅英大会実行委員長には、今大会に込めた思いを聞いた。

発展へそれぞれ道

全日本機械工具商連合会 前西 孝夫会長

前西孝夫会長―機械工具業界が今後成長するには何が必要でしょうか。
 一つ目に、機工商がそれぞれ目指す道を歩むこと。二つ目は天災などの外的要因にしっかりとした対処をすることです。

―一つ目の「それぞれの道を歩むべき」とお考えなのは何故ですか。
 勘違いされると困るのですが、業界が〝全体〟で成長する方法はもうそう多くないと思う。ユーザーが海外に出て、ネット販売が参入してくる。ユーザーニーズは変わり、流通形態も多様化している。取り巻く環境が急激に変化するこの時代に『これをすれば成長できる』という方法はなかなか無いと思うんです。

―ある決まった方向へと舵を切れば成長へとつながるわけではない、と。
 そう思います。戦後復興、高度成長、バブルの頃は違った。製造業を基幹産業として経済発展し、機械工具の需要は増え続けた。好不況の波はあっても日本経済のエンジンは力強く、乗り越えてくることができた。そうした右肩上がりの時代には、ある共通の成功方法はあったとも思うんですが。

―そこで「それぞれの道を歩むべき」だと。
 会社の規模や得意な商品、地域性、事業展開の領域、そして経営方針―。会社のそうした個性を生かし、競争力を最も発揮できる道を探すこと。そしてそれが獣道であっても、強みがあるのなら勇気を出して踏み出してみる。それがとても大事だと思うんです。

―具体的にはどういったことでしょうか。
 例えば、ここ数年の代表例が海外進出です。ほかにも物流に力を入れたり、PB商品を立ち上げたり、拠点を増やし事業エリアを広げたり。逆に、提案力を磨きフェイストゥフェイスに力を注ぐのも一つ。目新しいことをしなくても、培ったノウハウを高めるという方法もあると思う。

―それぞれが成長すれば業界も成長する。
 そうですね。各々がその道で自らを高め、成長する。そうすることで業界も成長することができる。

―二つ目の「外的要因への対処」は。
 そうした事業発展に力を入れる一方で、災害から会社を守る、被災しても早期復旧できる体制を整えないといけない。日本で事業を続ける以上、いつ被災するかわからない。事業活動を未来につなぐために、災害対策は喫緊の課題です。

若手活躍の場を作る

東京都機械工具商業協同組合 小川 修一理事長

小川修一理事長―8年ぶりの東京開催です。
 「今回は山田雅英実行委員長をはじめ、若い世代を中心に大会実行委員会を組織しました。業界の後継者不足が課題となっている中、こうした大きなイベントで若い人々が活躍できる機会を作ることが我々の責任だと強く感じています」
―ここ数年、機械工具業界で変化したことは何でしょうか。
 「私が実感するのは、だんだんと現場に入れなくなっていることですね。一昔前は、「近くまで来た」というだけでお客さんに訪問できましたが、今はすべてアポイントの世界になっています。何か理由がなければ訪問することもできません。ただ、だからこそ、何を作っていて、どんなものが必要かなど、今まで以上にお客さんのことを研究することが不可欠になっています。そうすることが、より深い提案に繋がっていくはずです」

―組合では、どんな活動が必要だと考えていますか。
 「戦後間もない時代から活動してきましたが、やり方を変えなければならない時に来ています。今、取り組んでいるのは、組合員同士のコミュニケーションの場を増やして、より身近な組合づくりを目指しています。組織体制の変更、マイナンバーの講習や生産財メーカーを招いたセミナーを開くなど、業界で働く全ての人がプライドを持って仕事ができるような活動をしています」

―これからの機械工具商が進むべき方向性とは。
 「業界の枠組みだけで考えていてはいけないと思います。各社各様の切り口があると思いますが、もっと立体的な視点で考え直すことが必要です。今大会のテーマは『挑戦する勇気』。時代が加速度的に変わっていく中、この変化に恐れるのではなく、立ち向かう勇気を持つことが、企業、そして個々の人間に求められています」

―参加者にメッセージをお願いします。
 「ぜひ参加された方々には、パネルディスカッションや、参加者との交流を通じて、何かに気づき、一歩でも半歩でも前に進めるきっかけにしてほしいです。そして、参加者の皆様で次世代の日本を作り上げましょう」

世界で戦う姿勢必要

全機工連全国東京大会 山田 雅英実行委員長

山田雅英実行委員長―なぜこの企画にしたのですか。
 「以前からドイツの中小メーカーと取引をしていて感じていたのですが、彼らは規模が小さくてもニッチメーカーとして発展しています。それができる理由は世界市場を意識しているからだと思うのです。能力では決して劣らない日本の中小メーカーも世界で戦う姿勢が必要だと強く感じました」。

―パネルディスカッションには、それを実践しているユーザーを選んだのですか。
 「そうですね。販路や市場がわからないと嘆く前に、彼らは世界に挑戦し、新たな日本の製造業の姿を模索しています。複数の企業が連携しているのも興味深いところです。また、高い志と並外れた構想を実現する類まれな実行力が彼らにはある。そんな彼らの町工場の挑戦を聞き、彼らと交流を持つことは刺激になると思います。それにお客様がチャレンジし変化しようとしているのに、我々が挑戦しないのはおかしいじゃないですか」。

―だからテーマを挑戦する勇気としたのですか。
 「みんなで議論して決めましたが、よい言葉を選べたと思います。長年我々は事業を継続してきてリスクを取ることを忘れている部分があるように思います。ネット通販やユーザーの購買行動など環境が変わっているのに、我々も変化しなければならないはずです。もしかすれば今が最後のタイミングかもしれない」。
 「作り手と使い手をつなぎ、ユーザーやメーカーと一緒になって価値を生み出すのが我々の仕事の原点だと思います。ネット通販の話題も多いですが、ネットで扱うのはコモディティ商品が多く、我々が強みとする価値を生み出すのは難しいと思います。(全国大会を)我々の強みやあり方を議論できる場にしたいですね」。

日本産機新聞 平成28年(2016年)10月25日号