五感に響く工具つくる

技術本部 切削工具開発部 転削工具開発グループ 及川有宇樹氏

 たった1本の切削工具でも材料、設計、開発、営業など多くの人の手を経てユーザーに届く。そして、携わった人の分だけの思いが製品に込められていく。1000超の新製品をTUNGFORCEとして発表したタンガロイ。そこには1000を超える思いがある。開発や販売に係った若手技術者4人にそれぞれの思いやこだわりを聞いた。1回目は転削工具を開発する及川有宇樹氏。

重視するのは加工効率

 2011年タンガロイ入社。学生時代は金型を学ぶ。入社後、今日まで転削工具の開発に従事。27歳。

 2011年タンガロイ入社。学生時代は金型を学ぶ。入社後、今日まで転削工具の開発に従事。27歳。

 及川氏が重視するのは「TUNGFORCEのコンセプト『倍速加工』をいかにして理解してもらうか」だ。切削工具は時として価格勝負になりがち。及川氏は「倍速加工の目的は工具費を下げるのではなく、加工効率を上げてトータルコストを下げること」だという。

 例えば自ら設計した両面仕様で6コーナが使えるエンドミル「ドゥーミニミル」。「6コーナ=経済的と考えがち。それも効果の一つだが、6コーナあるので、切削速度を上げても一個当たりで加工できる距離は短くならない。こちらの利点のほうが大きい」。「工具費が少し高くても、加工時間を短くするほうがトータルの生産性は上がり、結果コストが下がる」からだ。

 工具開発では自らの経験上、形状も重要と話す。「優れた材種が開発されても、それを支える形状でなければ100%の性能は引き出せない。逆に言えば工具形状が性能を引き上げることもある」。

 「工具は文房具に近い」と話す及川氏。「文房具はモノを生み出す道具。工具も同じで人が使って生きるもの。人が使うからこそ五感に訴える工具を作りたい」とし、設計した工具は自ら実際に削って感覚を確かめる。

 「一人一製品の開発を全て任せてもらえるのがやりがい」と話す及川氏。今後も「常識を打ち破るのは難しい。けれど独創的な工具開発で、常識を打ち破り続けられる技術者でありたい」。

日本産機新聞 平成28年(2016年)7月25日号