設備・研究開発5兆5100億円

2016年度計画

 日本の乗用車メーカーの2016年度研究開発費と設備投資費が出そろった。両費用を合算すると約5兆5100億円、前年度実績並みになる。5兆円の大台を超す巨額な開発・設備投資が、今年度も引き継がれる。工作機械・切削工具業界にとっては明るいニュースになる。ただし、計画内容に変化が見られる。いよいよ自動車各社は、次の100年を見据えた「エコカー投資」を始める。このため、従来型の生産能力増強から自動車の電子化、センサー開発に比重が置かれる。乗用車及び乗用車部品メーカーの生産技術、生産開発、ユニット生産技術、品質管理、購買の各部門は、電気メーカーなどとの共同開発にも力を入れている。今年度の乗用車各社の設備投資などの動向を追った。

乗用車6社 表

 例年と大きく変わったことがある。ダイハツ工業が1月29日、トヨタ自動車との間で株式交換契約を締結し、完全子会社となる。また、三菱自動車工業が、燃費不正操作を発端に日産自動車の傘下に入り、立て直し中。さらにはスズキが燃費データ不正問題を抱えるなど3社の計画が変わる、ないしは遅れている。結論から言えば、乗用車メーカーは8社から2社減の6社になる見通し。いよいよ乗用車メーカーが絞り込まれ始めた。その条件下で新車開発・生産拡大の競争が熾烈さを増している。

 研究開発費と設備投資費の2016年度合計額(連結)は、前年同期比2・4%減の5兆5100億円となった。うち研究開発費は、同4・2%減の2兆6950億円、設備投資費は同0・6%減の2兆8150億円で、研究開発が設備投資額に近づいた。

 工作機械業界に照らすと、昨年の自動車向け受注額(日本工作機械工業会、1︱12月)は、前年同期比21・6%増の2039億1800万円。内需合計額の35%を占めた。これはリーマンショック前の2000億円台に戻り、自動車産業の影響力の大きさがわかる。

 各社別の研究開発費、設備投資費を有価証券報告書とア二ュアルレポートから見た。

 トヨタ自動車の研究開発費(以下、研開)は、前年同期比5・5%増の1兆600億円、設備投資費(同設投)は同4・5%増の1兆2300億円と、競合他社を大きく上回る。1兆円超しはトヨタ1社。これは、ともに過去最大額で、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に代表される「もっといいクルマづくり」が背景にある。

 計画の中身は、自動運転、カーシェアリングなどの実用化・普及を加速させるものが含まれている。また、第1弾の新型プリウスがTNGAで成果を出し、その横展開が進められる。第2弾は今年度中に新型小型スポーツ多目的車(SUV)トヨタC︱HRが進められている。

 日産自動車の研開は、同5・3%増の5600億円、設投は同8・7%増の5400億円を計画する。同社は、「日産パワー88」に向けてコスト効率の向上を進めており、市街地や交差点を自動走行できる自動運転技術の導入やコモン・モジュールのファミリー化を進める。例えば、MPVとSUVのエンジン・コンポーネントをHigh hoodに統一する。また、SEDとH/BをLow hoodに数量をまとめコスト効率を高める。

 本田技研工業は、6社中ただ1社前年同期比を下回る。研開は同4・1%減の6900億円、設投は同13・5%減の5600億円。同社は、新型の環境対応車や海外向けの戦略小型車の開発を進める。その中でも、強化するのは燃料電池の開発、自動運転技術の推進をするとしている。また、次期シビックの直噴ガソリンエンジンにターボチャージャ(過給器)を組み合わせ低燃費化に全面改良するなども盛り込む。

 マツダの研開は、同7・2%増の1250億円、設投は同17・7%増の1050億円を計画する。多様なプラットフォームと部品の基本骨格(アーキテクチャー)の共通化に取り組むことなどを含んでいる。一つの開発、生産コンセプトを全車種で共有化し、ラインナップ全体でスケールメリットを追求する。SKYACTIV︱Dでは、燃費改善20%、ユーロ6規制に適合可能なクルマづくりを進める。

 富士重工業の研開は同17・2%増の1200億円、設投は同17・9%増の1600億円としている。前年同期比では6社中最大の2桁増を計画する。中期経営計画「際立とう2020」が背景にあり、SUVセグメントを中心に商品開発戦略、2020年までに20%の総合生産性を向上させるクルマづくりが進む。

 スズキの研開は、同6・9%増の1400億円、設投は同28・3%増の2200億円を計画する。設備投資に力を入れる。計画の大筋は、あらゆる面で「小さく、少なく、軽く、短く、美しく」を元にムダをなくし、効率的な経営に取り組むとしている。技術、生産、購買では「走りと燃費」「安全・安心」を構築し、最適調達と内製化の推進を図る。

 以上6社の計画を見たが、浮かび上がってきたのは設備投資は、従来のような生産能力の増強を目的とした投資から研究開発に向けた、電気・電子といった自動車の電子化投資が主力を占めるようだ。日本経済を牽引してきた乗用車産業が変化している。

日本産機新聞 平成28年(2016年)6月25日号