530時間稼動の要 治具

 高品質で、圧倒的な価格競争力で、しかも比べものにならない早い納期で自動車用エンジンやトランスミッション、ユニット系の部品加工を50年以上続ける会社がある。売上高の50%超しをトヨタ自動車が占め、同グループと取引する。同社間瀬康友社長に専用工作機械づくりと治具について聞いた。(4月5日、同社本社)

ユーザー仕様に仕立てる

専用機メーカー

間瀬社長―治具の生産能力は。 
 「エンジンシリンダ―ヘッド、ブロックなどの大物治具で600セット前後です。2013年は中小物も入れて600セットを記録しました。昨年は500セットぐらいで、今年も同じくらいを見込んでいますが、まだ能力の半分ぐらいです。また、専用治具を載せたエンジンや駆動系機械の加工ラインは、日本はじめ米国、ポーランド、タイ、中国、インド、オーストラリアなどに納めています」。

―トヨタ自動車が高い評価をする会社とお聞きしました。
 「そのように評価していただけるなら嬉しい話です。弊社は、治具を作るだけでなく、搬送・ロボットを付けたエンジン部品を作る工作機械設備を製造しています。例えば、シリンダヘッドを素材から完成品まで工程を作り、治具を載せてお客様にお納めします。品質と納期、価格はどこにも負けません」。

―特徴は何ですか。 
 「ロボドリルやタッピングセンターをベースにロボット、搬送装置、チップコンベア、高圧クーラント装置などを含めて一括のラインを作り納めます。専用機を一から作るのでなく、汎用機を専用機にアップし、システムで部品加工のできるまでを強みとしています。治具・セットアップ・搬送すべてを一気通貫で作り上げます」。

―中小で一気通貫のできるところは少ないと聞きます。 
 「お客様の要望する部分の発注にもきめ細かに対応しています。治具・セットアップ・搬送は、全て内製です。トータルセットアップすることでコストメリット・工数メリットをお客様にご提案することもできます。例えば、治具の取組では、刃具の検討(刃具図作成)から母機選定(工程検討)、治具姿勢選定(同)、ツーリング図作成、工作図作成をお客様ないし弊社で行い、弊社でツーリング干渉確認(治具構想設計)、搬送ハンド干渉確認(同)、剛性解析(同)、組付図(詳細設計)、部品図(同)、内部ポートバリ確認(製作・組付)を行います。このほか、弊社でセットアップし、搬送の取り組みもし、高品質・低コスト・短納期を実現しています」。

―治具製作の工作機械設備には驚きました。 
 「24時間365日稼働させるために工場全体を恒温室にし、精密治具加工はさらに二重扉構造の恒温室(20度±1度)内で行っています。設備の大半は多面パレット、工具本数の多いMCをそろえています。工作機械は、同じメーカーの同じ仕様のものを2台ずつ設備しています。また、高圧クーラントを採用し、切粉は全自動チップコンベアで運び、圧縮機で団子にして排出します。多面パレットは最大36面、ATC工具本数は最大240本のものを設備しています」。

―多面、ATC工具本数の多さは、最近の日本の生産現場では珍しい。 
 「横型MCのATCは240本ですから2台で計480本、五面加工機は180本ですから計360本、工具はほとんど同じで、空いているところに特殊工具を何十本も入れてあります。ATCが180本なら150番くらいは同じものを、後の30本はフレキシブルにしてある。ここに競争力を持たせました」。

―機械を止めないことは大変です。 
 「入社して間もない人も直ぐ仕事ができるよう自動化、簡素化を徹底させています。つまり、社内インフラを相当に高めたことで間違いのない環境を整えました。設備機械は、土曜日、日曜日でも動かしっぱなし。土曜日は、人が半日出てプログラムだけやれば日曜日も動き、月曜日の朝出社したらまだパレットに積んである、追加することでさらに稼働率を上げられるようにしています」。

―久しぶりに工作機械をしごく工場に出会いました。 
 「MCは530時間以上を稼働させています。搬送セットアップの例では、お客様からご相談を受け、納品まで60日、現地作業4日の計64日で完成させることを目標にしています」。

 (自動車及び自動車部品メーカーにとって融通が利き、便利な企業はないだろう。「山椒は小粒でもピリリと辛い」の所以。お客様ごとに治具をこしらえ、汎用機を最善の専用機にし、品質にも遜色がなく、大手企業の半値で作ってくれることは有難いに違いない。同社は、今後、日本の自動車産業がますます強くなるために、トヨタ自動車以外の企業にも取引の場を広めることも考えている)。

日本産機新聞 平成28年(2016年)5月25日号